外国人雇用

外国人労働者を雇用する背景と推移

2022年10月27日 | 外国人雇用
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日本の新たな労働力として、大きな期待が寄せられている外国人雇用。なぜ、今の日本で外国人労働者が求められているのか?また、日本で働いてもらうためには、どんな条件が必要なのか?日本の実態と外国人労働者を雇用する際の注意点まで、詳しく解説します。

日本の生産年齢人口と労働力不足

日本の人口は、2008年をピークに減少に転じました。それに伴い、15歳から64歳の生産年齢人口も年々減り続けています。2020年に約7,000万人だった生産年齢人口は、45年後の2065年には約4,500万人にまで減少すると予想されています。

もはや、日本の国籍をもっている人だけで社会を支えるには、無理があるといえるでしょう。

「生産年齢人口が減るなら、ロボットやAIなどで補っては?」という考えもありますが、簡単にはいきません。機械を導入するために高い先行投資費用が必要となりますし、機械が消耗する前に商品や生産量が時代に合わなくなれば、負債が残るだけです。

さらには、人間の仕事をすべて機械が担うようになると、人間は職を失います。ある程度の労働力は人間が担わなければいけません。 しかし、日本国籍を持つ人だけでは、今後も労働力は不足する一方です。それは同時に、経済規模の縮小や国際競争力の低下、ひいては財政危機に直面することを意味しているーー

現在の日本社会は、そうした危機をはらんでいるのです。

有効求人倍率を見ると人手不足が顕著!

人事・採用に関する大きな指標となるのが、「有効求人倍率」です。有効求人倍率とは、求職者1人当たりに何件の求人があるかを示す数値で、働き手となる生産年齢人口が減ると、有効求人倍率は上がります。また、有効求人倍率は景気の変動に大きく作用されるのも特徴です。

今までも、オイルショックやバブル景気などで、多大な影響を受けてきました。近年では、2008年のリーマンショックを受け、2009年には0.47にまで減少。それを底に上昇の一途をたどり、新型コロナウイルス感染症の影響を受ける以前の2018年には1.61にまでアップしました。

その後、コロナ禍の2020年には1.18へと減少したものの、人手不足の様相は年々顕著になっています。

その影響が如実に表れている業界に、病院関係者や医療従事者といった医療業、また外食・宿泊などのサービス業があります。これらの業界に該当する法人の中には募集しても人が集まらないという厳しい状況が続いている企業もあります。「正社員が集まらないなら、パートやアルバイトで補えば」「給与を多少高くすればいいのでは」と考えがちですが、現実は甘くはありません。

特に介護、また機械の製造現場などでは、給与が特別悪いわけでもないのに、正社員はおろか派遣社員を採用するのさえ苦労している職場もあります。その背景の一つとして、働き方の変化があるのではないでしょうか。少し前まで、非正規雇用というと、正規雇用を得られない人が、正規の職を得るまでの“つなぎ”として働くイメージがありました。

ところが、リーマンショックや東日本大震災、さらにはコロナ禍などさまざまな社会問題や社会変動を経て、現在の非正規社員の中には、正社員でいることのメリットや価値を感じなくなった人も少なからず存在します。

そういう人たちは、給与の多寡ではなく、自分の自由になる時間や趣味などにプライオリティを置き、あえて非正規を選択している人もいます。

もはや、単に給与を上げれば従業員を集められるという時代ではなくなってきているのです。生産年齢人口が減り続ける一方、有効求人倍率は上昇。働く側の意識や働き方の変化もあらわになっている今の日本。経営者側は、今後どうやって労働力を確保し、経営を続けていくのかを、真剣に考えなければいけない時代に突入しているのです。

どうなる?10年後の日本

現在の日本では、地域によるばらつきはありますが、外国人の働く場所は、サービス業や製造業が多くを占めています。

しかし10年後には、働き手の減少に加え、シフト制などを避ける若者の増加などの背景もあり、サービス業や製造業だけでなく、それ以外の職場でも、これまで以上に外国人労働者の力が必要になるでしょう。

外国人労働者が増えることは、足りない労働力を補い、納税者として日本社会を支えてもらうために有意義ですが、問題となるのが、日本人側の意識です。

日本は歴史的・地理的な要因もあり、良くも悪くも外国人への耐性が高くありません。ところが、10年後には、言葉が通じない人が身近にいる環境が当たり前になる可能性が出てきています。日本語が上手に話せない、読めない人に対し、相手が伝えたいことを理解するのはもちろん、相手に必要なことをきちんと伝えることは簡単ではありません。

現在、入管と文化庁は、日本人と外国人が地域で共に暮らし、活躍できる多文化共生社会の実現のために、日本語を母国語としない人にもわかりやすい「やさしい日本語」の活用を推進しています。多文化共生社会の実現には、お互いに歩み寄りながら積極的にコミュニケーションを取ろうとする姿勢が不可欠ですが、10年後の日本において、「やさしい日本語」の知識を身に付け、活用する人が増えていなければ、日本は外国人から“働く国”として選ばれなくなる可能性があります。

日本以外の多くの国では、多民族であったり、移民制度があったりすることから、一つの国の中で複数の言語が使われていることも珍しくありません。学校教育においても、初等教育から複数の言語が学べる環境が整っている国や地域もあります。

ようやく初等教育における英語教育が必修化された日本は、他の国と比較すると言語教育面では大きく出遅れていると考えられます。しかし今後、日本も多文化共生社会の実現を目指していくのであれば、国や自治体主導で多言語教育を行える環境整備を早急に進めていく必要があるでしょう。

また、2021年12月に東京都武蔵野市で、市内に定住する外国籍の人に日本人と同じ条件で投票権を認める住民投票条例案が審議されました。結果は反対多数で否決となりましたが、今後全国で、外国籍の人も地域社会に参加するための議論がますます盛んになることでしょう。

日本スタイルの多文化共生社会が少しずつよい方向に変化していき、10年後には外国人も日本人も住みやすく、日本にいると幸せだと感じられる国になっていてほしいと願っています。

在留外国人数は10年で70万人増!

日本人の人口が減る一方で、日本に住む外国籍を持つ人は直近10年で約70万人も増加し、2022年6月末の6月松の月末の在留外国人数は、296万1,969人で、前年末に比べ20万1,334人(7.3%)増加となります。

日本人の多くが外国人というと金髪碧眼の欧米人を思い浮かべがちですが、現在、日本にいる外国人の多くがアジアからの人々です。

圧倒的に多いのが中国ですが、構成比としては徐々に減っています。そのシェアの減少分をカバーするように伸びているのが、ベトナムです。2011年にはわずか4万人だったのが、2021年には約45万人と、10倍も増えています。

次に伸び率が高いのがネパールで、同じく約2万人から約10万人へと激増しています。

ベトナム人が増えている理由として、食文化や宗教観が似ていることが挙げられます。特にベトナム北部は日本の四季に似た季節の移り変わりがあるので、スーパーに並ぶ野菜も母国とあまり変わらず、ベトナム人がなじみやすい環境があるのでしょう。

また、ベトナムには日系企業の工場が多く、そこで「ベトナム人は日本になじみやすい」と感じた人が自治体などに助言したり、人手不足の企業に声をかけたりすることもあると思われます。

フィリピンは人数はあまり変動がありませんが、他国と大きく違うのは、2015年から日本が定めた国家戦略特区(東京、大阪等)における家事支援外国人として入国している人が多いことです。

また、定住者も多いので、長く日本社会に関わっている人が多いという特徴があります。*1

外国人労働者数の推移と産業別推移

外国人労働者という視点においてもこの10年で大きく増加しています。2019年からはコロナの影響がるため増加率は減少しているものの、2021年では約170万人が日本で働いています。先述した在留外国人数の60%が外国人労働者となります。

産業別で見ますと、その他を除き製造業46万人、サービス業28万人、卸売業・小売業で23万人、宿泊業・飲食サービス業で20万人となります。2019年時点で日本の民営事業所数は639万8912事業所であり、そのうち約29万か所で外国人労働者がそれぞれの仕事に従事しています。

しかし、この10年においては増加しているものの、こうしたアジアの国々からの働き手も、安泰ではありません。以前の中国がそうだったように、徐々に自国の経済水準が上がり自国で十分に稼げるようになれば、日本に働きに来る人が減ることが考えられます。

その一方で、これから増えてくると予想されるのが、パキスタン、バングラデシュ、スリランカといった南アジアの国の人々。さらにはアフリカの人々です。東アジア、東南アジア以外の、育った環境も感覚もまったく違う人たちが増えることによって、日本人側も外国人に歩み寄り、譲り合う寛容さが求められる時代が近い将来訪れるでしょう。*2

IT化やAI化で全ての業務が効率化する?

ここまで外国人雇用の背景について解説しましたが、「そうはいっても、IT化やAI化でなんとかなるでしょう」「外国人雇用なんてしなくてもなんとかなる」と考えている人も多いのではないでしょうか。

実際はどうでしょうか。

システム化によって事務仕事の効率化が大幅に実現した、というようなニュースを聞くことあるでしょう。ですが、「人がやる仕事が大幅に減って、新規で採用をしなくてもよくなった」というニュースはあまり聞いたことがありません。

また、「将来AIが人の代わりに仕事をしてくれるから問題ない」と考えている人もいるでしょう。では、いつそれが実現するでしょうか。

冷静に考えれば、目の前にある人材不足という根本的な問題の解決はIT化だけは難しく、ましてやコミュニケーションが重要な介護や飲食業は人が必要な領域です。

製造業であっても全ての工場のフルオートメーション化も設備費用面からみても現実的ではなく依然として人が対応する必要があります。

IT化や生産性向上は継続的に取り組むべきことですが、喫緊の課題である人手不足をどう解消するか、そう考えれば、日本人労働者とは別に外国人労働者の雇用も真剣に検討するべきでしょう。

外国人労働者雇用の政府の動き

2022年、政府は、現行の年間30万人の外国人留学生の受入れ目標に対し、新たな計画の策定を進めています。
留学生の受入れを増やしてからの展望は明確ではないものの、外国人労働者の雇用につながることは推測されます。

メリット、デメリット含め様々な議論があがっていますが、国の施策としての方針は見えてきました。
しかし、外国人労働者というワードを聞くと日本人の多くはどうしてもそのデメリットのほうを考えてしまうことが多いように感じますが、目の前にある人材不足による経済の停滞を防ぐなどのメリットから考えていきたいですね。

〇出典 
*1 最新情報: https://www.moj.go.jp/isa/publications/press/13_00028.html
*2 事業所数:https://www.stat.go.jp/data/e-census/2019/pdf/gaiyo2.pdf

〇図表出典
「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】(令和3年10月末現在)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_23495.html
https://www.mhlw.go.jp/content/11655000/000887554.pdf

寺岡 佑季子
広済堂ホールディングスグループ
株式会社タレントアジア Evangelist

2004年から2011年までタイ、マレーシア、ベトナムで日本語教育及び現地日本語教師養成に従事。
2019年から広済堂グループにて外国人人材紹介、特定技能外国人雇用支援サービス「タレントアジアサービス」のローンチ、特定技能外国人人材管理システム「TalentAsiaシステム」の開発・リリースに携わる。
日本語教育・外国人支援の観点から、特定技能制度の普及に尽力。

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