外国人雇用

外国人の日本語能力レベルをどう判断する?

2023年04月24日 | 外国人雇用
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深刻な人手不足が各業界で広がる中、広がってきている外国人の採用。

外国人を共に働く仲間として迎え入れるにあたり、採用側が初めに気になるのは、外国人応募者の日本語能力についてではないでしょうか。まずは、外国人応募者の日本語レベルを把握しましょう。

特定技能1号の在留資格取得に有効な日本語試験は2種類

特定技能1号の在留資格を申請するための要件として認められている日本語の試験は、日本語能力試験(JLPT)と国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)の2種類です。

他にも類似した名称の試験がたくさんありますが、それらは特定技能1号の在留資格申請には活用できない(※2023年4月現在)ので、その点は注意が必要です。

では、日本語能力試験(JLPT)と国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)のそれぞれのレベルは、「どんなことができるのか?」「日常の簡単な会話ができるのか?」「職場で困らないレベルなのか?」「今後どのような学習が必要なのか?」という点に着目して説明します。

1.日本語能力試験(JLPT)

JLPTは、日本語を母語としない人の日本語能力を測定し認定することを目的としている試験です。もともとはこれから日本へ留学しようとする人や、各国で日本語を学習している人の能力判定や熟達度認定の目的として活用されることが多かったのですが、近年では就職の応募条件として活用されたり、昇給・昇格・資格認定への活用にもその目的が変化・広がりを見せているようです。

JLPT にはN1、N2、N3、N4、N5 の5つのレベルがあり、最もやさしいレベルがN5 で、最も難しいレベルがN1 です。

特定技能1 号では、在留資格許可要件として「N4 以上」という条件が設けられています。記事中盤の表で、N4 とはどのくらいの日本語レベルなのか、採用する際にどのレベル以上を募集条件とするかの目安にしていただければと思います。

ちなみに、2022 年4 月時点の文部科学省が定める学習指導要領では、小学校で約1,000 字、中学校でも約1,000 字の漢字を学習すると定められています。つまり、N2 に合格した外国人は小学校卒業時、N1 なら中学校卒業時と同等数の漢字の知識があることになります。

語彙(ごい)数については、日本人児童の英語学習と比較してみます。
2022 年4 月時点の学習指導要領によると、小学校3・4 年生から必修化されている英語の授業において、小学校で600 ~ 700 語、中学校で1,600 ~ 1,800 語、高校で1,800 ~ 2,500 語を学習すると定められています。つまり、高校卒業時点では最大累計5,000 語となり、N3 ~ N2 で学習する語彙数と同等であり、N1 なら高校卒業時点の約2 倍の語彙知識があることになります。

もちろん、外国人の場合は母国語で漢字を使うかどうか(中国語圏)、また、かつては漢字表記をしていた言語(韓国語やベトナム語など)であるかによって、試験合格への到達スピードが違ってきます。

長い期間こつこつと日本語学校や専門学校、大学などで日本語を学習してきた学習者にとって自分の日本語がどこまで熟達してきたかを知ることは、自分の現在地を知り、今後の学習目標を立てるのにも役立ちます。JLPTのそれぞれのレベルを1段階上げるには6か月以上の学習期間を要することが多いため、年に2回という試験頻度ではあるものの長く継続的に学習する人には段階的に前進していく上で適度な頻度と試験の間隔なのかもしれません。

「日本語能力試験公式ウェブサイト」(国際交流基金/日本国際教育支援協会)より作成
(注1)漢字や語彙の数はN5~N1までの累計数である。 
(注2)1級~4級という認定基準だった旧日本語能力試験ではN3レベルに相当する級がなかったため、N3のレベル感はN4とN2の間の数値として当社にて算出。

参照:https://www.jlpt.jp/index.html 

2.国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)

JFT-Basicは、主として就労のために来日する外国人が遭遇する生活場面でのコミュニケーションに必要な日本語能力を測定し、「ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力」があるかどうかを判定することを目的としているテストです。

幅広い日本語学習者をターゲットとしているJLPTに対して、JFT-Basicは“就労のために来日する外国人”をメインターゲットとしていることから、JFスタンダードが日本語の熟達度として採用しているCEFRの枠組みに沿い、「日本語で何がどれだけできるか」という課題遂行能力をレベル指標にしています。課題遂行能力はCan-do(「~できる」という文)で表し、A1、A2、B1、B2、C1、C2の6レベルに分かれていて、このJFT-Basicでは満点は250点でCan-doのA2レベルの一定程度の日本語力(200点以上)を持っているかどうかを判定します。

A2レベルの目安は、

  • ごく基本的な個人的情報や家族情報、買い物、近所、仕事など、直接的関係がある領域に関する、よく使われる文や表現が理解できる。
  • 簡単で日常的な範囲なら、身近で日常の事柄についての情報交換に応ずることができる。
  • 自分の背景や身の回りの状況や、直接的な必要性のある領域の事柄を簡単な言葉で説明できる。

とされています。

JFT-Basicで200点以上取得していれば特定技能1号の在留許可要件となっている点では、JLPTのN4以上に合格しているのと同じですが、JLPTと大きく違う点のひとつとしてテスト実施頻度と結果通知までの期間があります。JFT-Basicは日本全国のすべての都道府県、その中の複数市町村で、また海外においても複数国複数都市で、毎月複数回実施されており、結果に関してはテスト終了後に受検に使ったコンピュータの画面で確認でき、在留資格の申請時に提出する必要がある判定結果通知書は、受験日から5営業日以内にテスト受験の予約サイトで確認・印刷することができます。年に2回しか受験機会がないJLPTに比べると非常に就職に活用しやすいのではないでしょうか。

測れる日本語能力の幅は狭いですが、特定技能1号で就職することを目的としている外国人にとっては、JFT-Basicのほうが目的に合ったテストといえるかもしれません。

参照:JFT-Basic 国際交流基金 日本語基礎テスト   https://www.jpf.go.jp/jft-basic/index.html 

試験の結果だけでは測れない日本語能力にも着目して

ここまで外国人の日本語能力レベルを測る試験について解説してきましたが、語学はコミュニケーションのための道具のひとつであり、生活の中で使用していくと読む・書くという面ではレベルがあまり高くなくても、話す・聞くというバーバルなコミュニケーションに直接かかわる面では上手に使いこなせる人もいます。

日本語を母国語としない外国人の中にも、日本語能力試験の合格レベルはあまり高くないけれど、話すのがとても自然な人、流ちょうな人、一生懸命話すから相手に伝わる人などがいます。一概に試験のレベルだけで条件を設けるのでなく、実際にオンラインや対面で会話をしてみて、会話やコミュニケーション能力、伝えようと努力する熱意などを参考に選考すると、入社後に伸びる人材の獲得につながると思います。

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