外国人雇用

特定技能とは?メリットデメリットも解説。特定技能外国人の雇用を実現するために

2023年02月14日 | 外国人雇用
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日本の労働力不足解消の切り札と言える「特定技能制度」。特に、人材が慢性的に不足している12分野では特定技能外国人への期待は大きなものです。

しかし、特定技能制度は雇用する側が新たに学ばなければならない知識が多く、手続きが複雑に感じられることが多いようで、なかなか最初の一歩を踏み出せずにいる企業もいるようです。

本記事では、特定技能制度について説明し、特定技能外国人を迎えるかどうかを検討するのに必要なポイントを紹介します。

特定技能制度とは?

特定技能制度とは生産性向上や人材確保が難しい産業で、即戦力となる外国人を受け入れる仕組みを構築するために2019年に創設された制度です。

日本では、中小・小規模事業者の人手不足が年々深刻化してきています。こうした人手不足は、日本の経済・社会基盤の持続可能性をも阻害する恐れがあり、解決手段のひとつとして創設されました。

特定技能には2種類の在留資格があります。

特定技能1号

「特定技能1号」は、12の特定産業分野(以前は素形材、産業機械、電気電子情報関連製造業が分かれ14分野でした)が対象となり、相当程度の知識、または経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの資格です。

特定技能2号

「特定技能2号」は、特定技能1号の12の分野のうち、建設と造船・舶用工業の2つの特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの資格です。

ただし、2022年6月時点で入管が発表したデータでは、現在特定技能2号で働く外国人は建設分野の1名のみで、特定技能制度全体としての活用はまだまだこれからというところのようです。

また、2022年12月から政府は、技能実習と特定技能の両制度の改正を議論する有識者会議を開催し、両制度の 外国人受け入れの方向性の検討を始めました。その中で特定技能2号の分野拡大などについても検討される可能性があり、2023年秋以降に特定技能制度が始まって以来最大の変革期を迎えるかもしれません。

参照:技能実習、特定技能と統合も視野 有識者会議が初会合(日本経済新聞)https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA140PE0U2A211C2000000/

特定技能1号特定技能2号
在留期間1年。6か月又は4か月ごとの更新。通算で上限5年まで3年。1年又は6か月ごとの更新
技能水準試験棟で確認(機能実習2号を修了した外国人は試験等免除)試験等で確認
日本語能力水準生活や業務に必要な日本語能力を試験等で確認(技能実習2号を修了した外国人は試験等免除)試験等での確認は不要
家族の帯同基本的に認めない要件を満たせば可能(配偶者、子)
受入れ機関又は登録支援機関による支援対象支援の対象支援の対象外

業務の難易度や業務分野に関する知識などのレベルに応じて2つのステップがあり、比較的基礎的な業務に従事するのが特定技能1号、それより高度な業務に従事できるのが特定技能2号ということになります。現状でいうと特定技能制度は、実質1号を示すと言えるでしょう。

特的技能1号の要件となる試験

先述したように特定技能1号の要件として日本語や技能水準をはかるための試験があります。

2023年2月現在、特定技能1号で働くための要件として認められている試験は、以下のとおりです。

日本語

1.日本語能力試験(JLPT)N4以上
2.国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-BASIC )200点以上

技能

1.各分野で定められた特定技能1号技能評価試験(試験名は分野によって異なる)

それ以外に特定技能1号になる方法として、「技能実習2号を良好に修了」したことも要件として認められています。

「技能実習2号を良好に修了」の状態とは、

1.各職種・作業の(随時)3級もしくは専門級の技能検定試験に合格
2.実習実施者である雇用主から発行された『技能実習生に関する評価調書』で「良好に修了」したことが認められる

のいずれかになります。

また、試験はいつでも受験できるわけではなく、年2回しか実施されないものから月に数回受験するチャンスがあるものまであります。

ちなみに受験日の数か月前に受験申し込みが必要なものもあるため、試験を受けて特定技能1号で働くことを目指す場合、遅くとも就職したい時期の6~10か月前には受験の準備に取り掛からなければならないことになります。

特定技能と技能実習の違い

技能実習(団体管理型)特定技能(1号)
関連法令外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律/出入国管理及び難民認定法出入国管理及び難民認定法
在留期間技能実習1号:1年以内、技能実習2号:2年以内、技能実習3号:2年以内(合計で最長5年)通算5年
外国人の技術水準なし相当程度の知識又は経験が必要
入国時の試験なし
(介護職種のみ入国時N4レベルの日本語能力要件あり)
技能水準、日本語能力水準を試験等で確認
(技能実習2号を良好に修了した者は試験等免除)
送出機関外国政府の推薦又は認定を受けた機関なし
※国によっては特定技能人材を送り出すためのライセンスや規定など有
監理団体あり
(非営利の事業協同組合等が実習実施者への監査その他の監理事 業を行う。主務大臣による許可制)
なし
支援機関なしあり
※但し、登録支援機関への業務委託は必須ではない
(個人又は団体が受入れ機関からの委託を受けて特定技能外国人に住居の確保その他の支援を行う。出入国在留管理庁長官による登録制)
外国人と受入れ機関のマッチング通常監理団体と送出機関を通して行われる受入れ機関が直接海外で採用活動を行い又は国内外のあっせん機関等を通じて採用することが可能
受入れ機関の人数枠常勤職員の総数に応じた人数枠あり人数枠なし(介護分野、建設分野を除く)
活動内容技能実習計画に基づいて、講習を受け、及び技能等に係る業務に従事する活動(1号)
技能実習計画に基づいて技能等を要する業務に従事する活動(2号、3号)
(非専門的・技術的分野)
相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する活動
(専門的・技術的分野)
転籍・転職原則不可。ただし、実習実施者の倒産等やむを得ない場合や、2号から3号への移行時は転籍可能同一の業務区分内又は試験によりその技能水準の共通性が確認されている業務区分間において転職可能
参照:外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組(出入国在留管理庁)
https://www.moj.go.jp/isa/content/001335263.pdf

技能実習は正式名称を外国人技能実習制度といいます。外国人技能実習制度は我が国で培われた技能、技術又は知識を開発途上地域等へ移転することによって、当該地域等の経済発展を担う「人づくり」に寄与することを目的として1993年に創設された制度です。


さらに2017年11月、「外国人の技能実習の適正な実務及び技能実習生の保護に関する法律(技能実習法)」が施行され、新たな技能実習制度がスタートしました。

※引用:外国人技能実習制度とは(公益財団法人 国際人材協力機構) https://www.jitco.or.jp/ja/regulation/

誤解されやすいですが技能実習は発展途上国などの経済発展を担うための協力であって、特定技能のように外国人の労働力を期待しての制度ではありません。

外国人の労働という点では同じように見えますが、制度も違えば目的も全く違うものです。雇用者側が根本的な理解をしていないと法律への抵触、労務などで大きなトラブルになることもあります。

特定技能制度のメリットとは?

特定技能はほかの在留資格と違い、国が「(現段階で)人材確保が難しい産業における即戦力の獲得のため」と明言し、人手不足への対応策という目的を明確にして法整備をしたことが最大の特徴です。

もちろん今までも、人材確保が困難な業種において外国人が就労していた経緯はあります。

例えば、資格外活動の許可を得た留学生や先述した技能実習生が該当します。しかし、留学生は週28時間しか働けないため、人材難解消という課題に完全には応えきれていませんでした。そもそも留学生は学業が本業なので、人材不足の解決策とはなり得ません。

技能実習制度は、日本で学んだ技術を自国の経済発展のために活かすことがそもそもの趣旨であり、雇用者側が求める人材確保とは目的が異なります。
ただ、実際の現場では、人材不足解消の方法として活用されるケースも少なくないようです。

また、2021年、アメリカの国務省が公表した世界各国の人身取引に関する報告書(「2021年人身取引報告書」)の中で、日本の「外国人技能実習制度」をかなり厳しく指摘しています。

「外国人技能実習制度」自体には意義があると思いますが、その運用実態に大きな問題が存在していたのではないかと考えられます。

今回の特定技能制度は堂々と「人材確保」をうたっているところが最大のポイントであり、社会全体のメリットと言えるでしょう。

外国人側は、事前ガイダンスなどを受け、特定技能制度を十分に理解してから就職しますし、求人者側も堂々と人材確保を目的に採用していけるので、両者の意思が合致しやすいのも利点といえるです。

また、技能実習生と違い特定技能外国人は即戦力を求められるため、条件として各分野や業務区分の試験や日本語能力試験などの合格、技能実習における約3年の就労経験などが求められます。

技能実習制度では、多くの受入れ企業が監理団体を通して、技能実習生の募集、研修、受入れ、渡航・生活に関する支援を行っており、適正な実習が行われているかの監査や指導などに関しても監理団体が深く関与する仕組みになっていました。

一方、特定技能制度では採用を自社で行うことも、国内外の人材紹介会社に委託することも、求人媒体等を利用することもできます。

支援に関しても登録支援機関に全部委託・一部委託、もしくは自社で支援を完結させることも可能です。

つまり受入れ企業それぞれの事情に合ったスタイルで採用や支援を選ぶことができるのです。

特定技能の求職者の中には日本での在留歴があり、日本語・日常生活・生活マナー・社会通念などを理解している方も少なくないため、技能実習生の受入れより、準備にかかる労力や費用をかけない採用方法を選択することができます。

仕事面だけではなく、生活面でもすぐに順応、適応できる人材を採用できることは、求人者にとって、大きなメリットだといえるでしょう。

特定技能制度のデメリットとは?

特定技能のデメリットとしてよく耳にすることの中に、給与の支給額が高くなるので企業側の負担が大きくなるという点があります。

特定技能では、「特定技能外国人の報酬額については、日本人が同等の業務に従事する場合の報酬額と同等以上」であることが求められています。

つまり、従事する業務の経験年数や社会人経験年数が同程度の日本人と外国人を採用する場合、両名に同等程度の給与を支給しなければいけません。

技能実習制度ではこのような規定がなかったので、日本人と外国人が同等の業務に従事する場合でも、外国人の給与額を日本人の給与額より低く設定していたケースもあったようです。

それもあって、特定技能の給与額が高いという反応があるのだと推測できます。

しかし、給与額で特定技能外国人が技能実習生を上回ったとしても、技能実習生を1号から受け入れる際の準備期間や費用や労力、来日後に戦力として働いてくれるまでの期間、寮/社宅の用意などさまざまな準備が必要になることを考えると、特定技能によってかかる企業側への負担は本当に技能実習よりも大きいのでしょうか。

技能実習も特定技能も、現状では日本人を雇用するよりは絶対的に費用がかかります。

しかし、費用面だけを見て採用を諦めてしまうと、今後日本が必要とする労働力はすべて他の国々へ行ってしまい、日本は人手不足が解消できないまま、5年後10年後を迎えることになりかねません。

費用面と労働力の必要性のバランスをどう考えるか、日本は今、大きな岐路に立たされていると言えるのではないでしょうか。

外国人雇用に関する制度と将来性

これまでは人手不足の状況であっても、工場の製造ライン、ビルクリーニング、建設などのように技能実習生以外で計画的な外国人雇用が難しかった分野、外食業のように留学生アルバイトの労働力に頼らざるを得なかった分野で、計画的に外国人を雇用し、人手不足の解消を図ることができるのが「特定技能制度」です。

以前は技能実習生の場合、3年もしくは5年の実習が修了した後、本国への帰国が義務付けられていました。

また本人の意志や能力、雇用主となる企業側の合意などの条件が満たされていても、本国において日本で実習した業務の技術移転をする期間として一定期間再来日ができないことになっていました。

そのため、技能実習生の中には、「3年頑張れば終わり」「3年頑張れば帰れる」という意識が自然と広まっていたのではないかと考えられます。図らずも働く上で、自分のキャリアアップや能力の向上をモチベーションにしにくい制度になってしまっていたと思います。

しかし、2019年に創設された特定技能によって、技能実習生が日本国内に在留したまま特定技能1号として就労の延長や転職ができるようになりました。

技能実習修了後も日本社会で活躍し続ける道が開かれたのです。技能実習生として在留する期間中に、技能実習分野の技術向上に努める、上のレベルの日本語能力試験に合格する、技能実習とは違う分野への転職を目指して特定技能1号の技能試験の勉強をするなど、将来の夢や目標に向かって進むことができるようになったのです。

また、これまでは就職先が見つからずに帰国を余儀なくされていた留学生も特定技能という新たな進路の選択肢が増えたことで、卒業・修了後も日本に残り、日本社会で活躍する道を選びやすくなりました。

今後は、特定技能1号の在留期間の上限である5年が経過した外国人にどのように対応していくかが外国人人材による人手不足解消を行っていく中で大きな焦点のひとつとなっていくでしょう。

「移民」ということばに敏感に反応する日本人も少なくないのが現実ですが、その敏感に反応する日本人の方々の生活を支えている中には外国人人材の力も多分に含まれています。

人によって表現はさまざまで、「働かせてやっている」「働いている」「働きにきてもらっている」、表現する人の立場や環境でその心情も異なりますが、日本という国を経済的な面だけでなく豊かにするために、最良の方法を探っていくことが重要です。

寺岡 佑季子(Teraoka Yukiko)
広済堂ホールディングスグループ
株式会社タレントアジア Evangelist

2004年から2011年までタイ、マレーシア、ベトナムで日本語教育及び現地日本語教師養成に従事。
2019年から広済堂グループにて外国人人材紹介、特定技能外国人雇用支援サービス「タレントアジアサービス」のローンチ、特定技能外国人人材管理システム「TalentAsiaシステム」の開発・リリースに携わる。
日本語教育・外国人支援の観点から、特定技能制度の普及に尽力。

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