外国人雇用

【2022年版】 各国の外国人労働者の受け入れ状況-日本は外国人労働者に選ばれる存在なのか?

2022年12月15日 | 外国人雇用
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日本でも移民問題や外国人労働者の受け入れについて、主に人材不足という文脈において議論されるようになってきています。実は、国内の労働者不足で外国人労働者を受け入れているのは日本だけではありません。

今回は日本以外の各国の状況と、日本は外国人労働者にとって魅力的に見えているのかを解説します。

在留資格別の推移

2021年10月時点の厚生労働省公表資料によると、外国人労働者数は1,727,221人で前年比2,893人(0.2%)の増加で、2007年の届出が義務化されて以来最高を更新しました。

外国人を雇用する事業者数は285,080カ所で前年比17,837カ所(6.7%)の増加で、こちらも届出義務以降最高を更新しています。

在留資格別でいうと、この10年で技能実習生は飛躍的に増えました。制度自体は20年以上前からありますが、これほど数が増えたのはここ最近のことです。

一方、留学生の数は頭打ちになっています。留学生に関しては、2008年に福田康夫首相(当時)の下で、2020年をめどに留学生を30万人に増やす「留学生30万人計画」が打ち立てられました。

2019年には30万人を超え、計画数値自体は達成されましたが、この計画の目的の一つでもあった「日本国内企業が優秀なグローバル人材を獲得する」「留学生の卒業・修了後の社会の受け入れを推進し、日本社会のグローバル化につなげる」は、達成したとは言い難いのではないでしょうか。

2018年時点で、留学生のうち大学院修了者の4割、大学卒業生の3割、専修学校修了者の1割が帰国、もしくは第3国へ出国しています。

つまり、留学生30万人計画で受け入れた留学生のうち、より高度な教育を受けた人ほど卒業・修了後に日本社会で活躍しておらず、期待していた結果に結び付いたとは言えないのが現状です。

なお、2022年、岸田首相は現行の年間30万人の外国人留学生の受け入れ目標に対し、新たな計画の策定を文部科学大臣に指示しています。今後、留学生をどのように受け入れ、どのように日本社会で活躍してくれる人材に教育・育成していくのかが注目されます。日本が学びたい場所、そしてその後に働きたい場所、住みたい場所としての質が問われていくのではないでしょうか。

参考:留学生「30万人計画」を見直し 「新たな留学生受け入れ・送り出し計画」を策定へ(自民党ニュース)


日本だけじゃない!?諸外国の高齢化

超少子高齢化と、それに伴う生産年齢人口の減少が進んでいる国は、日本だけではありません。日本ほどではないものの、欧米先進国も着実に高齢化率が上がってきています。

同様に、アジア諸国の高齢化率も上昇を続けており、特にお隣の韓国は、30年後に日本の高齢化率を抜くのではないかと予想されています。

社会の高齢化率が上がると、生産年齢人口の割合が低くなり、程度の差こそあれ働き手が不足するという問題に必ず直面することになります。

外国人労働者受け入れの取り組み

生産年齢人口の減少を、諸外国はどうやって解決しているのでしょうか。

台湾では日本に先駆けて、1992年に外国人労働者雇用およびその手続きに関する規定を定めた「雇用法」が施行されたことによって、現在の日本の特定技能制度のような外国人の非熟練労働者の受け入れが本格的に開始され、現在も積極的に外国人労働者を受け入れています。

その数は年々順調に増え、2021年末で外国人の非熟練労働者数は約70万人。国別ではベトナム、インドネシアが多く、業種別では、製造業と介護が多いようです。

特に介護では、国としての受け入れ体制も整備されています。外国人介護労働者を受け入れるにあたって、国指定の介護訓練の受講を義務付け、介護サービスや技能向上のためのサポート体制も充実。非熟練労働者が住みやすい環境を整えているのも特徴です。国も経済規模も大きくはなく、給与水準も日本に比べると低い台湾が外国人労働者の獲得に成功しているのは注目に値します。

また、韓国では、雇用許可制に基づき外国人の非熟練労働者を受け入れています。働き手を送り出す国と韓国政府が協定を結んだ上で、期間を区切って外国人労働者を受け入れるもので、2020年時点の受け入れ業種は、製造業・建設業・サービス業・農畜産業・漁業です。

2020年の受け入れ枠は5万6000人。国別ではカンボジアが最も多いものの、アジア諸国から均等に労働者を受け入れています。

さらに、ドイツをはじめとしたEU諸国でも、アジアからの介護従事者を積極的に受け入れるサポートやプログラムを提供する動きが活発化しています。

生産年齢人口が減り、少子高齢化が進む日本は、今後こうしたライバル国と人材獲得を巡って競わなければなりません。 しかし、この10年の外国人労働者の構成比を比較すると、台湾と韓国が増える一方で、日本は伸び悩んでいるのが現状です。環境が似ている台湾や韓国といった近隣の国をお手本に、この差が生まれた原因は何かをしっかりと見極め、外国人労働者を積極的に受け入れる努力をしていかなければならないといえるでしょう。

海外へ働きに出す国の方針と施策

ここまで日本の在留外国人の状況と近隣各国の状況について解説をしました。

逆にベトナムやインドネシアをはじめとする多くの労働者を様々な国に輩出している国の方針や国民の考えについて解説します。

各国の海外への労働者輩出の背景のひとつとして、労働者にとって自国で十分に生活できる賃金を稼げる仕事を見つけられないこと挙げられます。

あくまでも筆者の経験ではありますが、先日(2022年現在)も日本で技能実習生を3年修了して帰国した方の履歴書を複数確認したところ、10人以上見て帰国後に技能実習生としての技能や技術、知識を活かせるキャリアアップと呼べる職に就いていた人はいませんでした。 これには、個人個人でさまざま事情や理由があると思いますが、ひとつに、これから発展をしていく国では「キャリア」を意識して職に就くという人はまだまだ少数であり、多くの人は自分や家族の生活をまかなうために働いており、「キャリア」を意識する余裕を持つに至っていないことも考えられます。

今の生活を良くするために日本へ来て働くものの、自国では日本で経験した職業では十分なお金を稼げなかったり、日本での経験を活かせるような職がまだ社会的な地位を確立できていないということも考えられます。

その結果、母国で働くことをあきらめ、もう一度日本に戻って稼ぎたいという方も多いのが現実です。

一方で、自国の経済水準が上がってきたことにより、日本へ働きに来る人が減ってきている国もあります。自国の経済水準が上がってくると、様々な費用と得られる給与額のバランスをみて自国で働く方が増えます。これは、産業・経済の面で発展してきたということなので、とても良いことです。

とはいえ、すべての国がおしなべて経済水準が上がっているというわけではありません。国として率先して自国の労働者を海外へ出しているということではなく、状況的にそうせざるを得ない国がまだあるというのが実情のようです。

海外から来た労働者を雇用する企業様から「給与額に対するこだわりや主張が強い」というお声を聞くことがありますが、このような背景を知るとそのこだわりや主張が大きなものを背負っているからこそ故というのも少し理解できるのではないでしょうか。

社会全体がある程度の経済発展を遂げた日本人ほど、まだまだ「稼ぐ」ということに穏やかには向き合えないのかもしれません。

日本は選ばれる国であるのか

日本が人材不足で外国人労働者を積極的に受け入れようとしても、外国人労働者もどこの国で働きたいか、「選択する権利」があります。日本は外国人労働者にとって魅力に見えているのでしょうか。

※最新のベトナム労働者の推移表
参照:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(厚生労働省)
※ネパールは2013年以前、インドネシアは2017年以前は日本国内の在留外国人労働者上位国ではなかったので、それぞれ2014年、2018年以降のみの数値

現在、日本の在留外国人は1位中国、2位ベトナムとなっていますが、労働者の数にフォーカスしてみると、1位は2019年を境に中国とベトナムが入れ替わっています。

しかし、そのベトナムも2019年を境に数の伸びは穏やかになってきており、日本へ働きに行くモチベーションが下がりピークアウトしている可能性があります。

日本を働く場所として選ばない、もしくは自国で十分に安定した生活を送る給与が稼げるようになったという労働者側の変化が起きていると予想できます。

最近、留学先として韓国の人気が高いという話を耳にします。2021年時点のGDPでは韓国を日本が上回っていますが、政府予算に占める文化支出額は日本よりも遥かに多く、文化面で国際社会における地位を獲得してきたことが、留学生の獲得にも繋がり、将来的には労働者の獲得にも大きな影響を及ぼしてくるかもしれません。

そのようなことを考えると、外から見た日本がどのように見えているのか、国籍を問わずに住みたい場所として世界の人々の目にどのように映っているのかは、客観的に注視する必要がありそうです。

また、2022年11月現在、円安は本当に外国人労働者の動きに大きな影響を与えています。円で同額の給与を昨年と今年で比べて自国の通貨に換金すると3~4割減になってしまいます。

中国やタイ、そしてベトナムのように徐々に経済成長してきた国からの労働者は、だんだんと日本に心が向かなくなります。

実際にかつては多くの技能実習生を送り出していたベトナムの現地送り出し機関からも、2022年に入ってから日本への労働者の送り出しに消極的になってきているようです。

外国人労働者にとっては、憧れのある国で働きたい、生活したいという気持ちもあると思いますが、家族から離れて海外へ働きに出る目的のひとつは確実に「お金を稼ぐこと」です。

率直にいえば金銭的な魅力以外で振り向かせるのは容易ではありません。
(だからと言って金銭目的だから、お金さえ払えばいいだろう、ということで劣悪な環境で働かせることは人道的に問題があります。あくまでも働きに来た国の労働者と同等な扱いをすることが前提です)

“次の”外国人労働者を送り出す国について

現在、第2のベトナムとして、インドネシアやミャンマーが注目されています。さらにその次はスリランカ、パキスタン、バングラデシュなどの国も台頭してくるのではないでしょうか。

このような国の中には、自国への政情・経済不安が大きく、平和に安全に暮らしたいと願う人も多くいるため、日本で永住を望む人も少なくないようです。

日本にとっては、現在の給与額よりも家族と平和な場所で安全な家庭生活が送れる地であることで魅力発信はできます。特に社会の安全は短い期間で得られるものではなく、また社会は簡単には変われないということを、その国の国民だからこそ認識しているように思います。 そのためにも、日本社会で外国籍の人々の人権が守られ、日本語を母国語としなくても平等に教育や社会サービスが受けられるような多様性を受け入れる体制構築は効果があるでしょう。

外国籍であっても日本に“合法的に”住んでおり、日本人と同じ納税などの義務が課されます。

であれば、外国籍であっても様々な権利を認め、もっと積極的な社会参画ができるようにしていく議論がもっと進んでいくと、日本の多様性の受け入れが良い方向に向かうのではないでしょうか。

おそらく、民間のひとりひとりのレベルではすでに無意識のうちに生活の中に外国人との接点が生まれてきています。今後、組織や団体、自治体などのレベルで、意識的かつ現実的に国籍に関わらずに、住みやすさが感じられる多様性を認め合う社会を作り上げていければ、

給与額以外の魅力が発信でき、将来に向けた労働力不足の解消が実現できるかもしれません。

寺岡 佑季子(Teraoka Yukiko)
広済堂ホールディングスグループ
株式会社タレントアジア Evangelist

2004年から2011年までタイ、マレーシア、ベトナムで日本語教育及び現地日本語教師養成に従事。
2019年から広済堂グループにて外国人人材紹介、特定技能外国人雇用支援サービス「タレントアジアサービス」のローンチ、特定技能外国人人材管理システム「TalentAsiaシステム」の開発・リリースに携わる。
日本語教育・外国人支援の観点から、特定技能制度の普及に尽力。

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