外食業界に広がる人手不足の状況を打開する一手となり得る、特定技能1号制度。
新たに外国人社員を受け入れるために、どんな準備が必要なのか。
日本人社員の心構えや外国人社員に対する対応について、
実際に特定技能人材と共に働く飲食店店舗の方に聞きました。
会社概要
株式会社HUGE 様
〇外食分野
〇従業員数
1288名(2022年12月現在)
〇全国
31店舗(2023年2月現在)
東京・横浜を中心に京都・沖縄など国内に31店舗のレストランを展開する株式会社HUGE様。
RIGOLETTO(リゴレット)をはじめ、画一的なチェーン店には無い個性豊かなレストランを運営しています。
はじめに
特定技能1号の外国人社員が最初に入社したのは2022年7月。
東京都渋谷区、MIYASHITA PARK(宮下パーク)にあるアジアンレストラン「DADAÏ THAI VIETNAMESE DIMSUM(ダダイ タイ ベトナメーゼ ディムサム)」に、ベトナム出身の女性、PHAM THI NGAN(ファム・ティ・ガン)さんが配属されました。
今回は、同店舗のシェフである小林一貴(こばやしいっき)様にお話を伺いました。
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今回、インタビューをさせていただいた小林様は㈱HUGE様で勤続12年のベテランシェフ。
専門学校卒業後、17~18年間外食業界で勤務されて来たそうです。
「外国人だから」という特別扱いの必要はない?
――本日はお忙しい中、インタビューのお時間をいただきありがとうございます。
早速ですが、こちらのお店では何名の外国人の方が働いていますか?
日本人、外国人合わせてキッチンスタッフ全体で14人です。
うち、日本人3人、外国人11人。外国人スタッフは20代が中心で、最年長は31歳です。
――スタッフの皆様は、アルバイト、社員など主な雇用形態はなんですか。
現在、同店舗の社員は4名。他はアルバイトです。
――特定技能1号社員としてNGANさんが入社するにあたり、オペレーションやマニュアルの変更など、整備した部分はありますか。
特に変更したことはありません。
これまでも外国人スタッフを雇用しており、特に特定技能人材受け入れのための対応はせずに、1人の新人スタッフとして受け入れています。NGANさんは会話だけでなく、日本語を読む能力も高いので「外国人だから」という特別扱いの必要がありません。
――NGANさんはどんな仕事を担当していますか。
アペタイザー(前菜、冷菜)の調理。デザートの盛り付けなど、火を扱わない業務を任せています。キッチンに配属となったメンバーが1番最初に担当する業務です。
――NGANさんの仕事ぶりはいかがですか?
すごくまじめです。黙々と作業をこなしており、スピードも早い。
また、仕事を覚えたい気持ちが強く、自分から色々と質問をして来るところも非常に良いと思っています。
――一緒に働くメンバーとの協調性、チームワークはいかがでしょうか。
NGANさんと一緒に働くメンバーはスリランカ人が多いです。
NGANさんは唯一のベトナム人で、少しおとなしい性格ですが、明るい性格のメンバーが声をかけると盛り上がって話している様子もあり、心配はしていません。
日本人と外国人が一緒に働く環境で、気を付けていることは?
――日本人と外国人が一緒に働く環境で、業務の指示やミーティングなど対話の際に気を付けていることはありますか。
働くために来日している外国人のメンバーは、学校で日本語を学習して来ていることが多いですが、日本語は学習する言葉と実際に使う口語に差があるため、その違いには気を付けています。彼らが学習してきた、理解できる言葉を使うことで、コミュニケーションがスムーズに行えます。
その他にも、文字での連絡事項をメッセージアプリで送る際はひらがなで送るようにしています。
――特定技能人材を採用して良かったと感じることがあれば教えてください。
これまでも、外国人の応募者を選考することはありましたが、面接に履歴書を持って来なかったり、約束の時間に来ないなど、日本の採用(就職)活動のルールやマナーを理解していない方からの応募で困ったこともありました。
今回、人材紹介サービスを利用してみて、そういったトラブルが無くスムーズに選考が進んだのは助かりました。
また、日本語でのコミュニケーションがしっかりできる!
キッチンなので日本語のコミュニケーションはあまり必要ないように感じるかもしれませんが、一緒に働くメンバーとのコミュニケーションは非常に重要です。サービスのクオリティやメンバー間の人間関係に「ことば」は大きな影響を与えるので、人材紹介サービスを利用することで、日本語のコミュニケーション能力を事前スクリーニングしてもらえることで、一定の水準以上の日本語能力を身に着けた人材の採用ができる意味は大きいと感じています。
モチベーション高く仕事を続けてもらうには?
目標や将来の夢がある人のほうががんばりたい強い気持ちを持って
モチベーション高く仕事を続けているように感じています。
――NGANさんはスピード昇給をしたと伺ったのですが、どのように昇給が決まったのでしょうか?
NGANさんは入社して3ケ月で昇給しました。弊社では、店舗ごとにメンバーの昇給・昇進を決定することができるようになっており、3か月に1度昇給などについて話し合う会議を行っています。会議では、本人同席のもと、メンバー全員でその人が昇給するに相応しいか、またその理由について話し合います。メンバーの中で、その人の昇給に6割以上の人が賛成すれば昇給となります。
できることが増えれば給料が上がる仕組みなので、やる気がある人はどんどん給与が上がります。
本人が自分で昇給のアピールすることもできますが、シェフ(キッチンスタッフのリーダー的立場の方)や店長がその背中を押すことが多いです。
NGANさんは入社時の月給が24万円で、弊社のキッチンスタッフの最低ラインでした。
入社してしばらく経ち、店が最も忙しい金曜日、日曜日もアペタイザー(前菜、冷菜)を1人で回せるようになっていたので、昇給の会議で推薦しました。
今のNGANさんはその時点よりさらにできることが増えているので、次のチャンスでもきっと昇給できると思いますよ。
――NGANさんと一緒に働き始めてから、何かハプニングなどあったら教えてください。
う~ん・・・。特にありません。彼女は本当にまじめで、一生懸命働いているので、これまでハプニングなどはありませんでした。
特定技能外国人の採用のポイント
――採用の際に、重視しているポイント、NGANさんを採用としようとしたポイントを教えてください。
外国人スタッフの採用面接では、日本に来た理由を必ず聞いています。
生活費のために働くことは当たり前のことですが、目標や将来の夢がある人のほうががんばりたい強い気持ちを持ってモチベーション高く仕事を続けているように感じています。
NGANさんの場合は、それに加えて日本語で上手にコミュニケーションが取れたことも大きな決め手となりました。面接での会話の中でまじめな性格でどんな仕事でもこなせそうだと判断しました。
――選考時と働き始めてからのNGANさんの印象に違いはありますか?ある場合はどんな違いですか?
面接時と大きく印象の違いはありません。
しいて言えば、面接時の印象よりスピーディーに仕事ができる印象ですね。
――今後、NGANさんに期待することはなんですか。
本人にはまだ話していませんが…。アシスタントマネージャーを目指してほしいです。
キッチンのプロフェッショナルになるだけではなく、お店全体のことを考え、人を育て、それぞれのセクションにすべて対応できるようなポジションになって欲しいです。
――小林様の外国人社員に対する気配りと、特定技能1号として働くご本人の自己成長に対する高い意欲がお話から伺えました。NGANさんの今後の活躍に期待しています。
本日は貴重なお話を聞かせていただきありがとうございました。
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※内容は取材当時2023年2月時点のものです。