外国人雇用について語られるとき、よく技能実習と特定技能が比較されますが、そもそも両者は目的が異なります。技能実習は、外国人が本国に習得した技術を持ち帰ることが主目的の制度です。対して特定技能は外国人の方に日本の人手不足を補ってもらうための制度です。
特定技能外国人を雇用する際に確認しておきたい各業務内容のポイントと、技能実習との主な違いを分野ごとに説明します。
目次
日本における外国人介護人材の受入れ
日本では、これまでにEPA(経済連携協定)に基づきフィリピン、インドネシア、ベトナムからの看護師・介護福祉士候補者等の受入れを行ってきましたが、2017 年9 月から専門的・技術的分野の在留資格として「介護」が加えられるとともに、同年11 月からは外国人技能実習制度に「介護職種」が追加されるなど、国内の介護に従事する外国人の受入れ制度が拡大されました。さらに、2019 年4 月に在留資格「特定技能」が創設され、新たな外国人人材の受入れが開始されました。
特定技能介護人材を雇用する際のポイントと技能実習との比較
- 訪問介護は対象外
- 介護サービス利用者の送迎同行、車の乗降補助はOK
- 特定技能外国人を雇用できる施設は限られているので、「介護分野の1号特定技能外国人を受け入れる対象施設について 」を参照
➤詳しくは厚生労働省ホームページ「介護分野における業務を行わせる事業所の概要書」をご参照ください。
※サービス付き高齢者向け住宅等は該当しない施設もあるので要注意!
技能実習1~3号
- 実習開始後6月を経過した者、もしくは日本語能力試験のN2またはN1以上に合格している人は配置基準として算定できる。
- 技能実習生に夜勤業務その他少人数の状況の下での業務、または緊急の対応が求められる業務を行わせる場合は、利用者の安全の確保等のために必要な措置を講じている場合に限り可能。
特定技能1号
- 就労開始と同時に配置基準に算定できる。
- 一定の期間は日本人スタッフとともに施設利用者のサポートを行うことが望ましいとされているが、特定技能外国人の能力、適性を見て、いつから夜勤業務に加えるかなど現場で判断できる。
➤詳しくは外国人技能実習機構ホームページ「よくある質問(介護職種関係)」をご参照ください。
日本における外国人介護人材の受入れ
日本では、これまでにEPA(経済連携協定)に基づきフィリピン、インドネシア、ベトナムからの看護師・介護福祉士候補者等の受入れを行ってきましたが、2017 年9 月から専門的・技術的分野の在留資格として「介護」が加えられるとともに、同年11 月からは外国人技能実習制度に「介護職種」が追加されるなど、国内の介護に従事する外国人の受入れ制度が拡大されました。さらに、2019 年4 月に在留資格「特定技能」が創設され、新たな外国人人材の受入れが開始されました。
外国人介護人材の受入れ4つの制度
※1 日本語能力試験JLPTのN1~N5の目安は「外国人の日本語能力レベルをどう判断する?」を参照
※2 ただし、介護福祉士を取得すれば、在留資格「介護」を選択でき、永続的な就労が可能
※3 3年目まで修了した技能実習生は「特定技能1号」に必要な試験が免除される(在留資格を「特定技能1号」に変更した場合、技能実習と特定技能を合わせて最長10年となる)
➤詳しくは厚生労働省ホームページ「外国人介護職員の雇用に関する介護事業者向けガイドブック」をご参照ください。
外国人介護職員のキャリアプランの可能性
介護の場合、「介護福祉士」の試験に合格すると、在留資格「介護」に変更することができ、在留資格の更新回数の上限がなく、長く日本で働くことができます。しかし、日本語を母国語としない人々が日本語で介護福祉士に関する知識、実践を身に付け深く理解し、試験に合格することは非常に難易度が高く、介護福祉士試験の壁に阻まれて、大幅な人材獲得にはまだつながっていません。
介護人材の確保、介護福祉士の有資格者の確保は日本社会にとって喫緊の課題です。外国籍であっても介護職で働くことに意欲を持っている方には、日本の介護業界で活躍していただきたいものですが、その一方で、介護施設の利用者の健康や命に関わる以上、求める能力やスキルを引き下げることはできません。
そこで、日本に来てから介護福祉士試験に挑戦するまでの助走期間を長くとることで、より一層深い理解と豊富な知識の習得に結び付けることができます。
プラン1
外国人にとって入国の要件が少なくハードルが低いのが技能実習です。ただし、日本語能力や介護知識・経験は極めて初級という人が多いので、実習実施者である介護事業者が行わなければならない指導・教育・育成の負担は大きいでしょう。
そこで、実習生として入国し、3 年実習を受け、その後特定技能1号で介護の仕事を続け、特定技能1 号の間に介護福祉士試験に合格すれば、在留資格を介護に変更し、在留資格の更新を続けて長く介護人材として活躍できます。
プラン2
入国間もない技能実習生の日本語能力や介護の知識・経験では、活躍する場は限定的にならざるを得ないので、特定技能1 号から受け入れる方法です。経験等が同等レベルの日本人職員と、同等以上の給与等雇用条件を提供することが前提になりますが、応募条件も採用する介護事業者ごとに設定できますし(日本語能力試験N4 以上合格と特定技能・介護の2 種類の試験に合格しているという最低要件あり)、基本的な日本語能力も介護の基礎知識も学習した経験があるので、真っさらな状態の外国人技能実習生に比べると、現場での指導・教育・育成の負担が少し軽減でき、即戦力まであと一歩の人材が採用できます。
介護の場合、EPA( 経済連携協定)に基づく外国人介護福祉士候補者の受入れや、地方自治体や民間事業者主導の介護奨学生の受入れ、技能実習、特定技能1号、介護の在留資格など介護職員を外国人材によって獲得するための手段はさまざまありますが、日本社会の介護職員の不足数に外国人人材獲得のスピードが追い付いていないのが現状です。
介護は介護サービス利用者の心身の健康や命にも密接した職場であるため、選考や育成に手が抜けない一方で、現場の人手不足の深刻さやこのまま介護職員不足が続くことで日本社会が受けるであろうマイナスが大きいことが想像でき、頭を悩ませる状態になっています。
介護職だけでなく、日本社会ではさまざまな職業で「マルチタスク」が求められ、それができて当たり前という前提で多くを求めてしまいます。しかし、日本人でも「マルチタスク」な人ばかりではありません。職場における可能な範囲での適度な分業は職員全体の離職防止のための一つの手段であるのかもしれません。
外国人介護人材と介護福祉士国家試験
介護福祉士国家試験は、毎年1月に筆記試験、3月上旬に実技試験が行われ、3月下旬に合否が発表されます。日本人の介護福祉士有資格者も介護の現場としてはぜひとも欲しい人材ですが、それが外国人となると、この資格が持つ重要度はさらに高くなります。
介護分野での外国人人材というと、技能実習1~3号や特定技能1号の方が多くの介護事業所で活躍していますが、これらの在留資格は在留期間の上限が決められているため、永続的に働いてもらうことはできません。
しかし、他の分野と異なり介護分野には在留期間更新回数に上限が設けられていない「介護」という在留資格があります。
「介護」の在留資格を取得するには介護福祉士登録を済ませていなければならないのですが、その登録の要件は2023年4月時点では下記の2つのいずれかに該当するものと定められています。
1.介護福祉士国家試験合格者
2.(i)平成29年3月31日までの介護福祉士養成施設卒業者
(ii)平成29年4月1日から令和9年3月31日までに介護福祉士養成施設卒業者で経過措置による登録を受ける者
介護福祉士養成施設として認定されている専門学校や短大などの留学生の場合は、試験に合格できなくても2.の条件に該当するケースが多いので、暫定的に介護福祉士として認められますが、2023年4月現在、技能実習生、特定技能外国人として働く方々は1.の介護福祉士国家試験に合格するしか「介護」として残る道はありません。
しかし、高校卒業後すぐに来日している方が多い技能実習生や特定技能外国人にとって介護福祉士国家試験合格は決して簡単なものではなく、日本人が合格を目指す以上に難易度は高いものと想像できます。
2017年から技能実習制度に介護が追加され、2019年から特定技能1号にも介護が加わり、2023年時点ではさまざま方法、ルートで外国人の介護人材が採用できるようになっています。そのような中、2023年3月下旬の介護福祉士国家試験合格発表では、技能実習生から特定技能1号に移行して介護現場で一生懸命働いている外国人人材からも合格者が出てきています。
つまり、ここで紹介しているプラン1が現実として成し遂げられており、外国人ご本人の努力と、現場の献身的な教育・サポート体制によって、新たな「介護」人材の獲得に成功している介護事業者様もいらっしゃるという点で、「介護」×「外国人人材」の今後にますます期待できるのではないでしょうか。
参照:在留資格「介護」 https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/nursingcare.html
実際に日本で働く外国人介護人材のインタビュー
実際に介護人材として日本で働く外国人の方のインタビューです。
【千葉/介護】日本で働く外国人インタビュー[ミャンマー出身/特定技能1号]